勝海舟
Katsu Kaishu

 勝海舟 1
 勝海舟 2
 勝海舟 3 勝海舟 4
作家名
勝海舟 かつ かいしゅう
作品名
詩書
作品詳細
掛け軸 絖本水墨 緞子裂 合箱
本紙寸法49.5 ×152
全体寸法(胴幅)63.2×203㎝
註釈

【原文】
人生如湛水
狂濤起尺呎
先機不能治
何空辱恩旨
只憐同袍士
到悔到干死

予解官三年当時同学責其懶惰不能答也
偶話次及其事竊述志擬答云 辛巳初冬 海舟散人

(『海舟全集14 / 海舟漢詩集』所収)

【訓読文】
人生 水を湛ふるが如きも
狂濤(きょうとう)尺呎(せきし)に起こる
機に先んじて 治むる能はざるに
何ぞ空しく 恩旨を辱(かたじけな)くせん
只(ただ)憐れむは同袍(どうほう)の士
死に到るを悔(く)いざりしを

予、官を解かれて三年、当時の同学其の懶惰(らんだ)を責むるも答ふる能はざりしなり
。 偶(たまたま)話次(わじ)其の事に及び竊(ひそ)かに志を述べて答に擬(ぎ)せん。

【現代語訳】
人生、水を湛うるように満たされていたが
すぐ身の間近に大波が荒れ狂う
その前に、治めることはできたであろうに
天皇の気持ちを思うと申し訳なくやるせない
ただ憐れむのは友のこと
死なねばならなかったことを悔いてはいないだろうか

自分が官を辞して三年、当時の同学の士はその怠惰を責めるが答えることができなかった。
たまたま話題がそのことに及び、密かに志しを述べてその答えとした。
同袍とは西郷隆盛のことあろう。