【原文】
俊超参候付、二通書
状令披見、法体勇
健旨、珍重ニ候。
一、皆蓮偈芳和
再序、熏誦、再三
欣躍無罷候。一生二
々生、三々生、万物無
尽、妙蓮麟角、祥瑞
石可有尽期。
珍重之至、御墨
難尽、補処識文
喜慰不堪、言存事ニ候。
一、当廿一日ハ貴様慈父、
月海玄秋居士、五
十年忌、相当為焼
香、々代壱包、慥ニ請取
申候。五十年遠忌、
世ニ珍敷事ニ候。直ニ御
焼香可申候。
一、大桑房州公へノ儀、先
日恵眼へ申置、貴僧同
前ニ被御申越旨、可被下存候。
一、興登寺隠居和合儀、如何ニ候。
得貴意候。可書老世儀
意ニハ難及存候。
一、仏越和尚結制ノ儀、申
進候通ニ、其所も心得
事旨尤候。
其元、独円和尚・庫山和尚・
玉錫和尚、当制間
ハ、其地快ク行李候
旨、令承知、珍重之
儀存候。房戌院様
結制之儀も宜候半と
大慶申候。万々俊超
可申達候。頓首。
八月十九日、月舟稿
禅玄寺侍者中
尚々、龍原寺へ参候
故、乍次少致湯治
候。貴僧八幡神事、
催円を見舞被成、
御参詣候由、殊ニ当年
者、珍敷明月ニ而、一段
珍重ニ存候。以上。
【訓読】
俊超参り候ふに付き、二通書状披見せしめ、法体勇健の旨、珍重に候ふ。
一、皆蓮偈芳和再序、熏誦、再三欣躍罷むこと無く候ふ。
一生、二々生、三々生、万物無尽、妙蓮麟角、祥瑞石可有尽期。
珍重の至り、御墨尽くし難く、補処識文、喜慰に堪えずと言ひ存ずる事に候ふ。
一、当廿一日は貴様慈父、月海玄秋居士、五十年忌に相い当たり、焼香のため、
香代壱包み、慥に請け取り申し候ふ。五十年遠忌、世に珍らしき事に候ふ。
直に御焼香申すべく候ふ。
一、大桑房州公への儀、先日恵眼へ申し置き、貴僧同前に御申し越しなさる旨、
存じ下さるべく候ふ。
一、興登寺隠居和合儀、如何に候ふや。貴意を得候ひて書くべく、
老世儀意には及じ存び難く候ふ。
一、仏越和尚結制の儀、申し進らせ候ふ通に、其所も心得る事の旨、尤に候ふ。
其元、独円和尚・庫山和尚・玉錫和尚、当制間は、其地快く行李候ふ旨、
承知せしめ、珍重の儀に存じ候ふ。房戌院様結制の儀も宜しく候はむと大慶申候。
万々俊超申し達すべく候ふ。頓首。
八月十九日、月舟稿
禅玄寺侍者中
尚々、龍原寺へ参り候ふ故、次いでながら少し湯治致し候ふ。貴僧八幡神事、
催円を見舞い成され、御参詣候ふ由、殊に当年は、珍らしく明月にて、一段
珍重に存じ候ふ。以上。
【訳文】
俊超が参りまして、書状二通拝見しました。御法体勇健の旨、結構でございます。
一、皆蓮の偈に御芳和され、再序されましたこと、繰り返し拝見しまして、欣喜雀躍しております。
一生、二々生、三々生、万物無尽、妙蓮麟角、祥瑞石、尽くる期有るべし。
珍重すべき出来で、御文章もつくし難く、補処の識文、喜こびに堪えずと存ずる事でございます。
一、当月二十一日はあなたの慈父である、月海玄秋居士の五十年忌に当たり、
焼香のために、香代を一包み、たしかにうけ取り申しました。五十年遠忌とは
世に珍らしい事でございます。ただちに御焼香申します。
一、大桑房州公への儀は、先日、恵眼へ申し置きまして、貴僧も同前に御申し越しなさる旨、存じ下さるものと存じます。
一、興登寺隠居和合の儀、どうなりましたでしょうか。貴意を得まして書こうと思います。老拙の考えの及びがたきところと存じます。
一、仏越和尚の結制の儀、申し来る通りに、その所も心得る事の旨はもっともに存じます。そこもと、独円和尚・庫山和尚・玉錫和尚も当制の期間は、その地で快く行き来なさるとのこと、承知なさり、結構なことと存じます。房戌院様の結制の儀もよろしいことと大慶に存じます。
さらにもろもろ、俊超が申し上げます。頓首。
八月十九日、月舟稿
禅玄寺侍者中
なを、龍原寺へ参りますので、ついでに少し湯治してまいります。
貴僧は八幡の神事で催円をお見舞い成され、御参詣されたとのこと、
特に今年は、珍らしく明月で、さらに結構なことと存じます。以上。
本紙、裂とも傷み。