梅図自賛
【原文】
音韻回春伝信息
碧鮮毎日報平安
為憐高士山中臥
翠衲毛々誤斂昏
辛亥仲冬写并題摘菘人苞
【訓読】
音韻、春を回りて信息を伝ふ
碧鮮、毎日、平安を報ず
高士の山中に臥すを憐れまむとして
翠衲毛々として斂昏に誤まる
辛亥仲冬、写し并びに題す、摘菘人苞
【訳文】
風のたよりに春がめぐってきて、手紙が届いた
青い苔は、毎日、穏やかな春の訪れを知らせてくれる
節操のある高士が山中に臥しているではないかと思ったが、
苔が盛んに盛り上がっていたのを、たそがれの薄闇に見誤ったのさ
嘉永四年辛亥(一八五一)十一月、作画して自題した、摘菘人苞
七絶詩書
【原文】
画梅雖不在横斜
除知横斜豈有花
須識伝神写照妙
到頭只是属詩家
墨楳 菘翁
【訓読】
画梅に横斜在らずといえども
除ろに知る、横斜に豈に花あらんや
須べからく、伝神写照の妙を識るべし
到頭、只だ是れ詩家に属す
墨楳 菘翁
【訳文】
わたしの梅図に梅の横枝がないといっても、
そもそも、横枝に花などあろうか
絵をみる時は、すべからく、「伝神写照の妙」(真実を伝える妙技)を味わうべきなのだ
つまるところ、それはただ、漢詩人の領域に属するものかもしれない
墨楳 菘翁
本紙、若干小シミ。