乃木希典 乃木静子
Nogi Maresuke、Nogi Shizuko

 乃木希典 乃木静子 1
 乃木希典 乃木静子 2
 乃木希典 乃木静子 3
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 乃木希典 乃木静子 6 乃木希典 乃木静子 7
作家名
乃木希典 乃木静子のぎ まれすけ、のぎ しずこ
作品名
書状
作品詳細
掛け軸 紙本水墨 緞子裂 象牙軸 二重箱
(希典)本紙寸法75.8x15.8(静子)本紙寸法58.2x18.2
全体寸法(胴幅)90.2×157.2cm
註釈

〔希典書簡〕
【原文】
花翰拝誦、残暑之時下、
高堂弥御多祥奉大賀候。
然者、赤坂住宅之儀ニ付、色々
御厚情被下、難有多謝
之至ニ御座候。実ハ過日来、
愚甥病気之儀ニ付、一寸
出京仕居候処、帰村前夜、
小笠原氏より御高配之段
承り、図面も早速出来、
最早御手許迄相届キ候事ト
存候。何分御尽力奉願候。
先般、令閨御来駕之事
も承り、其他拝話ヲ仕度
儀も有之、愚妻参上候
筈、申付置候。何分御聞取
奉願候。老母ハ御伝言之
赴キ難有、当時黒□ナル
愚弟方え参り居候間、一両日中
彼方え参り可申聞候。
〇扨小生儀ハ目下肥料之
製造ニ従事シテ、更ニ
無他事罷暮シ居候処、
雲間ノ気象ハ彼是ト
動変不尠様子候。揚ケ句、
先ツ先ツ一時之静定、何より
めて度事ニ御座候。此際
ハ尊兄ノ如キ、尤モ驥足ヲ
伸ヘラレ候好時機ト愚考
罷在候。為邦家御精励ノ
程祈念之外無之候。
 なす事もなくて
   月日も
     仰キ得ぬ
 那須野ケ原の
   むぐら百姓
右ハ御請ケ旁、時下御見舞迄、
艸々書外ハ譲後便候。謹言。
八月廿六日     典拝。
 粟屋賢兄足下
筆末乍失敬、御令閨え
宜敷御伝声奉願候也。

〔静子書簡〕
【原文】
拝啓仕候。毎々酷暑
ノ砌、病気御見舞被下、
難有、御礼申上候。其
後ハ日一日ト快方ニ相
向ヒ申居儘、私モ安
心致候次第、乍憚御
休神成被下度、御願申
上候。尚玉木モ去二十
三日、金沢ニ帰隊仕候
間、右御承知被遊度、不
取敢、私ヨリ御返事申
上候。早々。
 八月廿五日
     乃木静子
粟屋景明様
二白、御奥様ニモ何卒
宜敷御伝言被遊度
御願申上候。

〔希典書簡〕
【訳文】
お手紙拝誦しました。残暑の候、あなた様におかれましては、いよいよ御多祥にて大慶に存じます。さて、赤坂住宅の軒につきましては、色々と御厚情をいただき、ありがたく多謝の至りでございます。実は過日来、愚甥が病気之儀となりまして、一寸出京いたしておりまして、帰村の前夜に小笠原氏より御高配の段を承り、図面も早速出来まして、最早、御手許まで届きましたことと存じます。何分、御尽力お願い申します。先般、令閨御来駕の事も承り、その他、お話をおうかがいしたいこともございますので、愚妻
が参上するよう、申しつけておきました。何分、御聞き取りくださいませ。老母は御伝言のことをありがたく存じまして、現在、黒□におります愚弟方へいって居りますので、一両日中にありらへ参って申し聞かせます。

〇さて、小生は目下肥料の製造に従事しておりまして、まったく他事なくまかりくらしておりますが、どうも上の方の雰囲気はあれこれ変動少なからざるように存じます。揚げ句、どうやらまずは一時落ち着きましたようで、何より目出度き事でございます。この時期には、尊兄のような有能な方は、大いに才能を発揮される好時機と愚考いたします。国家のためにどうぞ御精励の程、祈念申し上げます。
 なす事もなくて月日も仰キ得ぬ那須野ケ原のむぐら百姓(わたしはやる事もなくてお天道様を仰ぎ見ることのできぬ那須野の百姓でございます )右は承知かたがた時下御見舞まで草々、その他は後便に譲ります。謹言。
八月廿六日     典拝。
 粟屋賢兄足下
末筆にて失敬ながら、御令閨へよろしく御伝声くださいませ。

〔静子書簡〕
【訳文】
拝啓。毎日の酷暑のみぎりにも、病気御見舞をいただきまして、ありがたく、御礼申し上げます。その後は日一日と快方に向かいまして、私も安心致しました次第、はばかりながら御安心くださいますよう、御願い申し上げます。なお玉木も去る二十三日に、金沢に帰隊いたしました。右、御承知あそばされたく、取りあえず、私から御返事申し上げます。早々。
 八月廿五日
     乃木静子
粟屋景明様
二白、御奥様にもなにとぞよろしく御伝言くださいますよう御願い申し上げます。