頼山陽
Rai Sanyo(Rai Sanyou)

 頼山陽 1
 頼山陽 2
 頼山陽 3 頼山陽 4
 頼山陽 6
 頼山陽 7  頼山陽 8
作家名
頼山陽 らい さんよう
作品名
蒙古来
作品詳細
掛け軸 絖本水墨 緞子裂 合箱 台差し二重箱
本紙寸法35.6x114.3
全体寸法(胴幅)47x179cm
註釈

【原文・訓読文】

筑海颶氣連天黑 筑海の颶氣(ぐき)天に連なって黑く
蔽海而來者何賊 海を蔽(おお)うて來る者は何(いか)なる賊ぞ
蒙古來     蒙古來(きた)る
來自北     北自(よ)り來たる
東西次第期呑食 東西次第に呑食(どんしょく)を期す
嚇得趙家老寡婦 嚇(おど)し得たり趙家(ちょうか)の老寡婦を
持此來擬男兒國 此れを持し來りて擬(ぎ)す男兒の國
相模太郞膽如甕 相模太郞膽(たん)甕(かめ)の如く
防海將士人各力 防海の將士(しょうし)人各ゝ(おのおの)力(つと)む
蒙古來     蒙古來(きた)る
吾不怖     吾は怖れず
吾怖關東令如山 吾は怖る關東の令(れい)山の如きを
直前斫賊不許顧 直ちに前(すす)み賊を斫(き)り顧みるを許さず
倒吾檣登虜艦  吾が檣(ほばしら)を倒し虜艦(りょかん)に登り
擒虜將吾軍喊  虜將(りょしゅう)を擒(とら)へて吾が軍喊(さけ)ぶ
可恨東風一驅附大濤 恨む可し東風一驅(いっく)大濤に附し
不使羶血盡膏日本刀 羶血(せんけつ)をして盡(ことごと)く日本刀に膏(ちぬら)            しめざりしを
楽府六十六闋之一蒙古来録為
恒斎実契 頼襄

楽府六十六闋‥ここでは山陽の国史に題材を採った詩集『日本楽府』を指す。
『日本楽府』は、当時の国数である六十六にちなんで、楽府体(がふたい)六十六闋(けつ)を収録し、聖徳太子から豊臣秀吉までの国史を補おうとしたもの。文政11年(1828)に完成した。

楽府体‥漢詩の古体の一。漢代以降の2の題目・形式をまねて作った、伴奏を伴わない詩。
唐代に流行。新楽府 (しんがふ)といわれ、「白氏文集 (はくしもんじゅう)」にも収められる白居易のものが有名。

闋‥「ひとくさり」の意。

恒斎‥合田恒斎

【現代語訳】
筑紫の海を覆う颶氣(台風)は天まで登り黒々としている
その海を蔽いつくすように攻めてくるのはいかなる賊か
蒙古が来た
北から来た
蒙古は東西の国々を征服し
趙家(南宋)の寡婦(揚太后)を手中にし
趙家(南宋)の軍隊を持って、この男児の国を支配しようとする
相模太郎(北条時宗)の肝は甕の如くで
海を守る武士はそれぞれに奮闘した
蒙古が来た
私は恐れない
私が恐れるのは、山のように動かない関東の令(鎌倉幕府)だ
ただちに進撃して賊を斬り、逃げることは許さない
わが船の帆柱を倒し、敵の船に登り
敵将を捕らえてわが軍は叫ぶ
恨むべきは、東風(台風)が吹き抜け大波がおこり
(敵)の血で日本刀をことごとくを染められなかったことだ

楽府六十六の内の一つ蒙古来を恒斎との約束により録す。頼襄