坪井信道
Tsuboi Shindo(shindou)

 坪井信道 1
 坪井信道 2 坪井信道 3
 坪井信道 4
作家名
坪井信道 つぼい しんどう
作品名
西山杏仙宛書簡
作品詳細
扁額 紙本水墨
本紙寸法16.1×86.6
額寸法28.8×115.2㎝
註釈

【翻刻文】
春寒未返候処、貴様
万福被成御座御賀候。拙家老少
無事消光申候。乍憚御安慮被下候。
然ハ早春ハ御紙面被下、且御国産
木綿一反御恵投被下、遠方
之処、御配意之段、千万奉謝候。
拙子も早春米谷清澄寺兄方
迄ニ病気見廻ニ相登り申候。
何卒拝顔致度被存候処、
長岡泰順子話ニ其節
両之日中ニハ米谷迄御尋も
可被下やニ承知仕候ニ付、相薬
御持申上候処、何カ御故障ニ而も
被成御座候や。御光来無之
不得拝顔、遺憾存事
御座候。昨年ハ清澄寺へも
御尋被下候由、兄より承知存候。
尚又何の辺御序之節ハ
何卒御立寄可被下、兎角
病身之上、逐々老衰ニ及ヒ
候へハ、拙子も遠方ニ而常ニ心配
致し罷在候。扨拙子事
正月廿九日迄米谷ニ罷在、夫より
大坂へ出、緒方ニ両日逗留、夫より
出京、四日逗留、閏月九日
京師発足、山川無滞
同月中之日江戸帰宅仕候。
此段御安意可被下候。先者右之段
申上度、御礼旁草々如此
御座候。寒暖不同候之時候、
為道御自愛専一奉存候。頓首
二月二日

坪井信道

西山杏仙様

梧下

【現代語訳】
春の寒さもいまだやまざるところ、皆様
万福にお過ごしのこと賀し申します。わたくしどもも
無事に過ごしております。どうぞご安心ください。
さて、早春には御手紙下さり、また錦地の
木綿一反を下さり、遠方より
御高配いただいたこと、感謝申し上げます。
わたくしも早春には米谷の清澄寺兄のところ
まで病気見舞に行って参りました。
なんとか御拝顔いたしたく存じておりましたが、
長岡泰順の話では、その折り、
二三日中には、米谷まで御尋ね
くださるように承知しましたので、お薬を
持参申しましたところ、何か御故障でも
ございましたでしょうか、御光臨なくて
拝顔を得ず、遺憾で
ございました。昨年は清澄寺へも
御尋ね下された由、兄より承りました。
また何かのおついでの節には
どうぞお立ち寄りくださいませ。とかく
病身の上、追々老衰に及んで
おりますので、わたくしも遠方から常に心配
致しております。さて、私事ですが、
正月二十九日まで米谷に滞在して、それから
大坂へ出て、緒方宅に両日逗留し、それから
出京しまして四日逗留し、閏月九日に
京師を出発して、道中滞りなく
同月二十三日には江戸に帰宅いたしました。
このような次第でどうぞご安心くださいませ。まずは右の通り
申し上げたく、御礼かたがた早々
御手紙いたしました。寒暖不同のおりから、
道のため御自愛専一にお過ごしくださいませ。頓首
二月二日

坪井信道

西山杏仙様

梧下