【原文】
拝誦 芳崖翁
画幅、御自送の趣、
敬承、然ルニ、小生事、
都合有之、一週間程、
帰山、来二十日ニハ
必ス出都の積リニ有之。
就而ハ不在にても、
橋本家にて、幅類
御預リ可申候間、
此段得貴意度、匆々頓首
三月十二日 岡倉覚三
沖 一誠殿
芳翁の作、
大ニ一覧を
楽み居候。
二十六日以後、御令
息御出の趣、
拝承仕候。
【訳文】
拝誦 芳崖翁画幅を御送りくださるとのこと、
承りました、ただ、小生、都合がありまして、
一週間程帰山いたします。来る二十日には
必ず出都する積りです。
つきましては、小生が不在でも、
橋本家で、画幅類を御預り申しますので、
このことを御承知いただきたく存じます、早々頓首
三月十二日 岡倉覚三
沖 一誠殿
芳崖翁の作品を拝見できますこと、
大いに楽しみにしております。
二十六日以後に、御令息様がお出でのこと、
承知いたしました。
※書簡宛先の沖一誠は、鹿児島県士族玉利甚兵衛の三男で、帝国大学工科大学を卒業後、東京府技師、土木課長を務め、從四位、勳五等に叙された人物と思われる。
美品。