小堀遠州
Kobori Enshu

 小堀遠州 1
 小堀遠州 2
 小堀遠州 3 小堀遠州 3
作家名
小堀遠州 こぼり えんしゅう
作品名
松永貞徳(勝熊)宛書状
作品詳細
掛け軸 紙本水墨 緞子裂 合箱
本紙寸法43.8×29.3
全体寸法53.1(胴幅)×104.5㎝
註釈

【翻刻文】
芳墨辱存候。いよいよ御無為之由、
珍重々々。仍而烏丸殿より御題を
申請候歌之事、仰給候。愚詠御
はつかしく候へとも、是非之御所望無
理かとやらんに覚候へとも、一紙に書入
進之申候。
 聞恋
あたなみの名にや立なん音にのみ
きくよりぬるゝ人のたもとは
近日此方へ待申候一会始可申候と、
存事ニ候。貴老御出候ハヽ、内々
之通、式部卿も御越候様に
可致候。つもる事のみ者、面上
申残候。恐惶謹言。
 十月六日   (花押)
  勝熊公 御人々、小堀遠江守

【釈文】
芳墨辱じけなく存じ候。いよいよ御無為の由、
珍重々々。仍て烏丸殿より御題を
申し請け候ふ歌の事、仰せ給ひ候。愚詠御
はづかしく候へとも、是非の御所望無
理かとやらんに覚え候へども、一紙に書き入れ
これを進らせ申し候。
 聞恋
あだなみの名にや立なん音にのみ
きくよりぬるゝ人のたもとは
近日此方へ待ち申し候一会始め申すべく候と、
存ずる事に候ふ。貴老御出候はば、内々
の通、式部卿も御越し候ふ様に
致たすべく候。つもる事のみは、面上
申し残し候ふ。恐惶謹言。
 十月六日   (花押)
  勝熊公 御人々、小堀遠江守

【現代語訳】
お手紙ありがとうございます。いよいよ御安泰とのこと、
結構に存じます。さて、烏丸殿から御題を
いただきました歌の事をおっしゃいました。愚詠は
恥ずかしく存じますが、是非にとの御所望で、出来は
悪いと存じますが、一紙に書き入れて
呈上申し上げます。
 聞恋(きくこい)
あだなみの名にや立なん音にのみ
きくよりぬるゝ人のたもとは
浮気者との噂が立ってしまいます。ただあなたのことを聞いただけでも涙に濡れてしまうわたしの着物のたもとのことが知られてしまいますと。

近日、こちらでお待ちしております会を始めようと存じます。
あなたがお越しいただければ、内々に
式部卿へも御越しいただけるように
いたします。つもるお話はお目にかかりますまで
申し残しておきます。恐惶謹言。
 十月六日   (花押)
  勝熊公 御人々、小堀遠江守

松永貞徳
元亀2年(1571)~承応2年(1654)

京都の人。名は勝熊。別号、長頭丸、逍遊軒など。和歌を細川幽斎に、連歌を里村紹巴に学ぶ。貞門俳諧の祖。門下から北村季吟らを輩出。歌集に『逍遊愚抄』、俳書に『新増犬筑波集』『御傘』『紅梅千句』など。 俳人、国学者。