久松真一

久松真一記念館

Hisamatsu Shinichi Memorial Museum

FAS

昭和19年、当時の京大仏教青年会の活動に不満のあった、求道的な学生らと久松真一の出逢いにより、これを改組して、学問と実践とをともに修練する場として「京都大学学道道場」が結成され、その綱領(四ヶ条)、第一条「本道場は絶対の大道を学究行取し、以て世界甦新の聖業に参ず」を本旨としました。戦後まもなく京都帝国大学の枠をはずして一般の人々も参加できるようになり、会員(道人)の数も飛躍的に増え、同時に朝鮮戦争の勃発という時代背景のなかで、綱領の内容をわかりやすい言葉で表現したいという久松からの提言があり、会員(道人)十名ほどの起草委員会による、約九ヶ月の論究の末、久松以下、全会員(道人)の賛同を得て、昭和26年1月26日、妙心寺山内霊雲院において「人類の誓い」が初めて宣言されました。
以下は、そのときの学道道場長、久松真一の挨拶です。

「過去七年間私たちの学道道場は戦時中はもちろん、戦後を通じて、ひたすら絶対の大道を学究行取してまいりました。その間、多少の盛衰消長はまぬがれませんでしたが、今日道人の皆さまがそれぞれの方面において力強い歩みを示していられますことは、皆さまご自身が意識せられると否とにかかわらず、道場に負われるところ大なるものがあると信じます。さて道場もその後の客観的情勢の変化と道場自体の成長とによって昨年の四月八日の道場記念日にあたり、私から道場はその綱領を具体化して新しい発足をすべきではないかと提言しましたところ、皆さまがそれに応ぜられまして、真剣に反省しそれぞれ意見を寄せられ、委員のかたがたがまた、幾回となく会合を重ねて討議され、今回ここに「人類の誓い」なる成文を得まして皆さまの前に発表できますことは、道場にとりましてまことにご同慶にたえません。時あたかも二十世紀の後半にはいるはじめの年、しかもその最初の道場日にこの宣言をなしうることを心から喜ぶと共に、道人のひとりひとりがその課せられたる責務の重大なるを痛感せざるをえません。この「人類の誓い」は単に道人ひとりひとりの誓いであるのみならず、それは人類全体の誓いでなければなりません。私たちは自らこの誓いに生きるとともに、すべての人類にこの誓いを同じうせしめなければなりません。この「人類の誓い」は、言葉はだれにもわかるようにやさしい文字を用いてありますが、その語の背景には実に深遠な哲学と宗教が含まれています。われわれはこの誓いを天下に宣言するとともに、自らその誓いに生き自らこれを実践しなければなりません。この「人類の誓い」は仏教にいわれる四弘誓願よりもより大きな思想と内容を持っています。われわれはこの誓願を持って、人類のすべてに共感してもらおうではありませんか。たとい、道場の組織や形態は時に応じて変化することがあるとしても、この「人類の誓い」は人類の生存するかぎり、人類とともに滅びないでありましょう」

人類の誓い
わたくしたちはよくおちついて本当の自己にめざめ、
あわれみ深いこころをもった人間となり、
各自の使命に従ってそのもちまえを生かし、
個人や社会の悩みとそのみなもとを探り、
歴史の進むべきただしい方向をみきわめ、
人種国家貧富の別なくみな同胞として手をとりあい、
誓って人類解放の悲願をなしとげ、
真実にして幸福なる世界を建設しましょう。

久松真一

The Vow of Humankind
Keeping calm and composed,
Let us awaken to our True Self,
become fully compassionate humans,
make full use of our gifts according to our respective vocations in life,
discern the agony both individual and social and its source,
recognize the right direction in which history should proceed,
and join hands without distinction of race, nation, or class.
Let us, with compassion vow to bring to realization humankind's deep desire for Self-emancipation and construct a world in which everyone can truly and fully live.

Dr. Hisamatsu, Shinichi