谷木因
Tani Bokuin

 谷木因 1
 谷木因 2
 谷木因 3
 谷木因 4
 谷木因 5
作家名
谷木因 たに ぼくいん
作品名
木麟宛書状
作品詳細
掛け軸 紙本水墨 紙裂 合箱
  本紙寸法68.7×15
全体寸法(胴幅)68.6×100p
註釈

【翻刻文】
霜廿九日之御状
朔日相達、御安全
珍重、何方も雪、
こまり申候。僕老身
無事風雅多承也。
度々のたひに
日を還り候。
一、九月廿六日之貴簡、
返書候。御礼心ニ
うかひて所存を書
述追て哉、其時の
返書の事も今は
わすれ候。老衰と
存候。
一、つれづれ草百首、
両度の賀発起
衆より念比ニ詞
をよせられ候。講師
の無下なるもいかゝと
貴書の前日に
和歌誹発いたし候。
詞書それらしき
よし、老人の
劣なから御信切ニ
まかせ写し置候。
大老のかた見と
可被思召候。
  九月尽 木因
案山子つれて
  かへる家路や
  九月尽
初雪の其後
  さたハ消けり
其外あまた書写
ものもの申給候。心事
御面期と存候。以上。
桜下人
  十二月五日
木麟丈

【現代語訳】
霜月(十一月)二十九日の御手紙が十二月一日に到着しました。御無事のよし結構なことです。どこも雪がつもり困っております。わたくしも老身ではありますが無事に暮らしておりまして、風雅のことも多々あり、しばしば旅にも日を送っております。
一、九月廿六日の御手紙へ御返事を出しました。御礼をしなくてはと心にかかり、所存を記しておきましたが、今ではその内容も忘れてしまいました。老衰というものでございましょう。
一、「つれづれ草百首」、両度の賀の件は発起人たちから御丁重なるお言葉を寄せられ、講師がだらしないのは如何かと思いまして、あたな様の御手紙の前日に和歌や俳諧をいたしましたので、ことば書きのそれらしいものを、老人の劣作ではございますが、御親切に甘えて写してお送りいたします。老人の形見と思ってください。
   九月尽 木因
  案山子つれてかへる家路や九月尽(用のなくなった案山子を連れて帰る九月の終り)
  初雪のそののちさたハ消けり(初雪の後は全く便りもなくなりました)
そのほか色々と書き写したものもございますが、御拝顔のおりといたしましょう。以上。
桜下人
  十二月五日
木麟丈