藤田嗣治
Fujita Tsuguharu (Leonard Foujita)

藤田嗣治1
藤田嗣治2
藤田嗣治3
藤田嗣治4藤田嗣治5
作家名
藤田嗣治 ふじた つぐじ
作品名
稲荷神社(絵入りハガキ書簡)
作品詳細
額装 ハガキ 水彩 黄袋 布差し箱入 東京美術倶楽部鑑定委員会鑑定書
画面寸法8.7 ×14.7cm
額寸法25.7×30.8㎝
註釈

今日は大層美しいの
有難う存じまして
もうしわけがありませんね。
僕は毎日街鉄や外濠東電
をのりまはして上野まで行くの
やっと四十五分で中々道中は
面白い事が多いので御座ます。
●●ちゃんといらっしゃい君か
ら知らせがあれば待つて
戻ります。なにしろ大層
お話がたまって居るので
是非お目にか々らなければ
これは京都のそばの
稲荷です今度帰りは
京都やこ々に遊んだの。

作品は、嗣治19歳の時の澤鋻治宛書簡に描かれたもの。澤鋻治は、海軍造兵総監(後の海軍技術中将)澤鑑之丞の長男で、嗣治の幼い頃からの親友。場所は京都伏見稲荷大社大鳥居付近で、江戸初期から続く料理屋玉家の一角が描かれている。切手の消印と記述より、明治39年9月18日に書かれ、翌19日に投函されたことがわかる。嗣治は、前年の9月に東京美術学校予備科より東京美術学校西洋学科に進学しているので、ちょうど入学後一年を経たあたりの書簡である。嗣治の在籍した当時の西洋学科主任教官は黒田清輝で、黒田は嗣治の卒業制作作品を、悪い絵の例として皆の前で説明したという。その逸話からも覗えるように、嗣治は、黒田の外光派的な手法に馴染めなかった。そのため、嗣治は度々、授業を抜け出しては、観劇や旅行に興じていたという。この書簡の文面からも、そのような嗣治の東京美術学校時代の様子をよく感じることができる。作品は、東京美術学校西洋学科在学中の写実的な嗣治の画風を知る貴重な資料でもある。