日本人の持つ美意識の結晶ともいうべき掛け軸。日本人の創造した優れた美術の多くは、掛け軸という表現様式に託され、さらにその輝きをまして、今を生きる私たちに感動と喜びを与えてくれます。また、それは、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知ることでもあります。長良川画廊は、近世、近代書画専門の画廊として、日本の貴重な文化遺産である掛け軸を中心に、選りすぐりの作品をご紹介をするとともに、鑑定、評価、買い取りなどのご相談にもお答えしております。
《わたしたちが失いつつあるもの》
日本人に受け継がれてきた『学びのこころ』
日本に最初の中央集権国家が生まれる飛鳥・奈良時代以降、外来文化である仏教と儒教は、日本の学問の中心となり、日本人の精神的規範となって日本の文化に深く浸透していきます。また、一方には、遙か神々の時代より、自然の営みに寄り添い、自然に溶け込んで生きる、日本人固有の自然観、死生観があります。日本の豊かで多彩な優れた文芸はそうした歴史的背景、精神風土の下で育まれてきました。また、そこには、学芸を尊び、「学びのこころ」を大切にした古き日本人の姿があります。
『学びのこころ』にふれる今月の一点
「ただ一向に念仏」することに徹し、無二的人間形成、無二的書道を提唱した近代最後の念仏聖者。
山本空外
御名号(南無阿弥陀仏)

念仏を信じるということは、生きられていることの深いわけに頭をさげることである。(無二的人間)
「南無」とは頭をさげること。「阿弥陀」とは限りなき命(無量寿)、知識や言説では解き明かすことのできない光明をあらわし、「仏」とは覚(さとる)ということである。念仏を信じ、「ただ一向に念仏」するということは、いのちのありがたさを深く感じ、自己のいのちの根源にせまりいくことである。山本空外は、念仏三昧の実践のなかで、自・他が対立せず、自分も最善を尽くすが、相手も生かし切って、ともども平和なうちに、人間として真実の生活を実らしいくという『無二的人間形成』を提唱し、西欧文化には無い東洋独自の書道文化を、「自然のいのちが生動して書の形となるような心の文化」であり、書道によって心を深める『無二的書道』の取り組みを提唱した。
久松真一のこころ
—生誕120年を迎えて—
若松英輔(文芸評論家)
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