日本人の持つ美意識の結晶ともいうべき掛け軸。日本人の創造した優れた美術の多くは、掛け軸という表現様式に託され、さらにその輝きをまして、今を生きる私たちに感動と喜びを与えてくれます。また、それは、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知ることでもあります。長良川画廊は、近世、近代書画専門の画廊として、日本の貴重な文化遺産である掛け軸を中心に、選りすぐりの作品をご紹介をするとともに、鑑定、評価、買い取りなどのご相談にもお答えしております。

《わたしたちが失いつつあるもの》

日本人に受け継がれてきた『学びのこころ』

日本に最初の中央集権国家が生まれる飛鳥・奈良時代以降、外来文化である仏教と儒教は、日本の学問の中心となり、日本人の精神的規範となって日本の文化に深く浸透していきます。また、一方には、遙か神々の時代より、自然の営みに寄り添い、自然に溶け込んで生きる、日本人固有の自然観、死生観があります。日本の豊かで多彩な優れた文芸はそうした歴史的背景、精神風土の下で育まれてきました。また、そこには、学芸を尊び、「学びのこころ」を大切にした古き日本人の姿があります。

『学びのこころ』にふれる今月の一点

加賀の千代女

加賀の千代女 1

落鮎や 日に日に水の おそろしき


芭蕉没後の地方俳壇は、芭蕉の弟子各務支考の説く「門前の姥の合点せぬは俳諧にあらず」という俗談平話の庶民的俳風によって、支考とその一派「美濃派」を中心に、伊勢の岩田涼菟、中川乙由(麦林舎)ら「伊勢派」の俳諧勢力らが「田舎蕉門」、「支麦の徒」、「野夫村童の雑談」と揶揄されながらも着実に根を張っていった。千代女の生まれた加賀はこの両派の強力な勢力圏であった。千代女の噂が人々の口吻にのぼり、支考の来訪を受けるのが17歳のとき、俳人千代女はその揺籃期に「美濃派」や「伊勢派」の感化を受け、俗化の一途を辿ったといわれる俳諧混迷期にあって風雅の道一筋に生きるのである。

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